★将棋の駒 2019.9.11

「吹けば飛ぶような将棋の駒にぃ~♪」と言えば、西條八十作詞、船村徹作曲で、村田英雄が歌って大ヒットした「王将」の出だしです。何でも、戦後初のミリオンセラーだとか。三國連太郎や勝新太郎の映画「王将」の主題歌にもなったそうで、そもそもは村田さんの浪曲歌謡曲LPの中の1曲として、1961(昭和36)年9月に発売され、11月にシングルカットされたのだとか。

「王将」の物語は、そもそも関西名人を名乗った将棋棋士阪田三吉の生涯を描いた演目で、劇作家北條秀司の代表作です。1947(昭和22)年6月に新国劇で辰巳柳太郎を主演として初演され、以後、1950(昭和25)年1月に「続王将」が、同年12月に「王将 終篇」が上演されています。後にこれらは3部作とされ、全部が上演される際には「王将一代」とされています。辰巳の当り役の一つですが、映画ではこの他にも阪東妻三郎が演じていますし、舞台でも笑福亭鶴瓶、板尾創路、笠原章など大勢の人が演じています。

緒形拳さんは、この「王将」と辰巳に憧れて新国劇に入団します。1958(昭和33)年のことです。ただし、緒形さんは1968(昭和43)年に新国劇を退団します。はじめて「王将」の主役阪田三吉を演じたのは、1975(昭和50)年のことで、北條秀司劇作40周年の記念公演でした。その後、翌1976(昭和51)年と1978(昭和53)年の3回演じられています。

本日は、緒形さんのお宅に書画や物品の調査に伺いました。こちらはその際に新たに出てきたものです。

王将」の駒です。「拳へ」「秀司」と、北條先生から緒形さんに送られたものであることが判ります。横には「大坂 三越劇場」と彫ってあって裏を見ると

「昭和五十一年(1976)十二月 王将講演記念」とともに緒形さんをはじめとする出演者の皆さんのサインがあります。2回目の阪田三吉を演じた際のものです。これでは大きさがわかりづらいかと思いますが、背後の本をご覧下さい。かなり大きいものであることがわかるかと思います。

北條先生の資料の中には、この講演のポスターも残っていて、「大阪三越開設70周年記念」と「北條秀司 劇作40周年記念」に「緒形拳奮闘特別講演」の文字が見えます。これらは、10月14日(月)から本学湘南キャンパスの付属図書館11号館展示室で始まる展示会で展示する予定です。
緒形さんは、最後まで「王将」への熱い想いを語っていらっしゃいましたし、きっといつかはひとり芝居で阪田三吉を演じたのではないかと思えてなりません。ぜひ、これらの”ホンモノ”をご覧いただければと思います。よろしくお願いします!

馬場弘臣

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